チームのための動画スタイルガイドの作り方
すべての画面録画をブランドらしく保つ動画スタイルガイドの作り方。画面規格、音声、モーション、字幕、ファイル命名までのルールをまとめます。
チームのための動画スタイルガイドの作り方
チームは共通のトーン&マナーで文章を書き、デザイナーはコンポーネントライブラリを使っています。ところが5人が5本の製品動画を録画すると、解像度も5通り、イントロも5通り、マイクの品質もばらばら、という結果になりがちです。動画スタイルガイドはこれを解決します。「その日たまたまこう録った」を、繰り返し再現できる自社らしい型に変えてくれるからです。
この記事では、書き留めておく価値のある判断をひとつずつ見ていきます。誰が録画ボタンを押しても、同じスタジオで作ったような仕上がりになるように。
動画スタイルガイドが重要な理由
スタイルガイドは創造性を縛るものではありません。アイデアと完成した動画の間に立ちはだかる、20個の小さな判断を取り除くためのものです。
- 一貫性が信頼を生む: 視聴者は一言も聞かないうちにあなたの動画だと気づきます。統一されたフレーミング、色、テンポは、細部まで気を配っている証拠です。
- 速さは積み重なる: 画面サイズ、背景、アウトロが決まっていれば、録画は半日仕事ではなく10分の作業になります。
- オンボーディングが楽になる: 新メンバーが過去のファイルを解析しなくても、初週から使える動画を作れます。
- 編集が予測可能になる: 同じ仕様で録った素材はきれいにつながるので、3人分の映像を1本のリリース動画にまとめられます。
1. 録画キャンバスを定義する
他のすべてが依存する数値から始めましょう。
- 解像度: 主要な出力を1つ決めます。1920×1080であればドキュメント、マーケティング、サポートのほとんどをカバーできます。縦型のSNS用クリップ(1080×1920)の仕様も併記しておくと、16:9の素材を後から切り抜く事態を防げます。
- フレームレート: UIの操作説明には30fpsで十分で、ファイルサイズも扱いやすくなります。60fpsはアニメーションの多いインターフェース、ゲーム、高速スクロールが必要な場合に取っておきましょう。
- キャプチャモード: モニター全体、単一ウィンドウ、固定範囲のどれをいつ使うか決めます。よくあるルールは、アプリのデモはウィンドウ、細かなUIは範囲、複数アプリをまたぐ操作のときだけモニター全体、というものです。
- セーフマージン: 字幕、チャプター表示、プレーヤーの操作ボタンが重要なUIを隠さないよう、端に残す余白を決めておきます。
これらは法律ではなく初期値として書き、外れる場合は理由を求めましょう。
2. 収録環境を標準化する
動画が素人っぽく見える最大の原因は、実は編集とは関係ありません。
- デスクトップを整理する: 個人ファイル、無関係なブックマーク、話の流れに関係ないタブは隠します。
- 通知を切る: 録画前は必ずおやすみモードに。Slackのポップアップ1つで完璧なテイクが台無しになります。
- デモデータを使う: 現実的だが架空の名前・メール・数値を用意したデモアカウントを標準にします。顧客のプライバシーを守り、素材の再利用もしやすくなります。
- ブラウザの拡大率: スマートフォンで見ても文字が読めるよう、拡大率(多くは110〜125%)を指定します。
- テーマを決める: 製品をライトモードで見せるかダークモードで見せるかを決めます。シリーズ内で混在させると、再生リストが一気に場当たり的に見えてしまいます。
3. ビジュアルアイデンティティを固める
ブランドが表れる部分です。
- 背景: 承認済みの背景を1〜2種類決めます。ブランドグラデーション、無彩色のフラットな色、控えめな壁紙などです。誰も目分量で決めないよう、正確な色を明記します。
- 余白と角丸: 録画映像をフレームからどれだけ内側に置くか、角をどれだけ丸めるかを標準化します。小さな数値ですが、統一感への効果は絶大です。
- 影と奥行き: やわらかいドロップシャドウは録画映像を背景から分離します。強さを一度決めれば、すべての動画が揃います。
- アクセントカラー: ハイライト、矢印、進行表示に使う色を1つ選び、製品UIと一貫させます。
4. ウェブカメラとカーソルのルールを決める
- ウェブカメラを使う場面: 顔出しはお知らせやチュートリアルでは親近感を生みますが、リファレンス的な動画では邪魔になることもあります。どの種類の動画で使うかを明記しましょう。
- 位置とサイズ: 既定の配置とサイズを決めます(右下の円形ピクチャーインピクチャーが定番)。視聴者が常にどこを見ればよいか分かります。
- カーソル表示: カーソルのサイズとクリックハイライトの有無を標準化します。ハイライトはチュートリアルでは非常に有効ですが、マーケティング映像ではノイズになります。
- カーソルのスムージング: カーソルの動きを滑らかにできるなら、仕上げ用の動画ではオンにしましょう。ぶれたマウス軌道は未編集であることの最大のサインです。
5. 音声の基準を書き出す
視聴者が最も厳しいのが音声です。
- マイク: 承認済みのマイクまたはその種類を明記します。ノートPCの内蔵マイクは最後の手段として文書化しておきましょう。
- 環境と音量: 吸音性のある部屋で録音し、マイクは手のひら1つ分ほど離し、動画ごとに音量を調整せずに済むよう、ラウドネスを揃えます。
- システム音声: アプリの音を収録する条件を決めます。音のデザインが意味を持つ機能デモでは収録し、無音のUI説明ではオフにするのが一般的です。
- BGM: 音楽を使うかどうか、使うならナレーションに対してどの程度の音量にするかを決めます。多くのチームはイントロとアウトロだけで使っています。
- 無音カット: 長い間を自動的に詰めるか、どの程度まで詰めるかを合意しておきます。
6. 動きとテンポを定義する
- ズーム効果: スマートフォンの画面で指先より小さくなる細部はズームしましょう。動きが唐突にならないよう、既定のズーム倍率と維持時間を決めておきます。
- 速度変更: フォーム入力、インストール、読み込み画面は早送りします。視聴者が真似すべき手順は決して早送りしないでください。
- トランジション: 1〜2種類に絞って一貫して使います。セクション間はクロスフェード、セクション内はカット、という組み合わせが定番です。
- 長さの目安: 種類ごとに目標を決めます。機能紹介は60〜90秒、チュートリアルは3〜7分、SNS用クリップは30秒以内が目安です。
7. テキスト・字幕・チャプターを標準化する
- タイポグラフィ: タイトル、ラベル、下部テロップのフォント、サイズ、色を並べます。サイズは2種類あれば十分です。
- 配置: テキストの表示位置と表示時間を決めます。2回読める長さ以上、という基準が有効です。
- 字幕: 字幕を必須にするか決めます。アクセシビリティと無音自動再生を考えれば、答えはたいてい「必須」です。
- チャプター: 3分を超える動画には、統一した命名でチャプターを付けることを必須にし、視聴者が必要な箇所へ飛べるようにします。
8. 命名と保存のルールを決める
スタイルガイドは書き出しボタンで終わりではありません。
- ファイル名:
製品領域_トピック_バージョン_YYYY-MM-DDのようなパターンを1つ採用します。予測できる名前だからこそ検索が機能します。 - フォルダ構成: 元素材と公開用の書き出しを分け、プロジェクトファイルは素材と一緒に保管します。
- 書き出しプリセット: ドキュメント、YouTube、アプリ内、SNSなど、届け先ごとの形式・解像度・品質を文書化します。
- 保持期間: 元素材をどれだけ保管してからアーカイブするかを決めておけば、ドライブが静かに埋まることもありません。
ガイドをプリセットに変える
誰も適用しないスタイルガイドはただの文書です。ルールはできる限りクリックできる形にしましょう。保存済みの録画プリセット、再利用できる背景とズームの設定、イントロとアウトロを組み込んだテンプレートプロジェクト、届け先ごとの書き出しプリセットなどです。ガイドに従うほうが無視するより楽であることが目標です。
1ページのスタートチェックリスト
チームが録画する場所に短い版を貼っておきましょう。
- 解像度とフレームレートを設定
- 通知オフ、デスクトップ整理、デモデータ準備
- 承認済みの背景・余白・アクセントカラーを適用
- 動画の種類に合ったウェブカメラとカーソル設定
- マイクをテストし、音量を統一
- 細部にはズーム、待ち時間には早送り
- 字幕を生成し、3分超ならチャプターを追加
- 正しいプリセットで書き出し、規則どおりに命名
まとめ
思っているより小さく始めましょう。チームで最も議論になる5つ、たいていは解像度、背景、ウェブカメラ、音楽、ファイル名を選び、今日書き留めて、今週プリセットにします。すべてを先回りするのではなく、実際に疑問が出たときにルールを足していけば十分です。
1か月もすれば、動画ライブラリは個人の作品の寄せ集めではなく、ひとつの製品のように見えてきます。動画スタイルガイドが本当にもたらすのは、より厳しい動画ではなく、より速く作れて、どれも「自分たちらしい」動画なのです。